吸排気系のオーバーホールと組み上げ / Rebuilding intake & exhaust systems
排気系をアップデートしつつ組み上げていく。まずはヒートエクスチェンジャー。
左がオリジナルのSC用だが、右の84カレラ用を使いたい。両者の違いをじっくり観察してみると、フランジの厚みは違うものの、取付面から最下部までの高さは同じようだ。なお84カレラ用はフランジ面から5mmほどの出っ張りがあり、吸気ポートに入り込む構造なので、SCに使うにはこれを切り取る必要がある。
SC用(左)の内径は34mm。それに対して84カレラ用(右)は37mmで、SCのシリンダーヘッドの排気ポート径ともほぼ同じ。84カレラ用を使うことに決定。早速不要な出っ張りを切り取る。
84カレラの純正触媒と80年頃のSC用純正マフラーを組み合わせていく。写真では見えていないが、クロスオーバーパイプはEGRの関係から元のSC用を使う。
保安基準上問題になるのが、触媒とクロスオーバーパイプ周りの遮熱板。この車を入手した時から失われていたので、どうにか手に入らないかとしばらく探したものの、見つかりそうにないため自作を決意。国産車の触媒遮熱板と亜鉛メッキ鋼板を組み合わせてどうにかこうにか形を作ったところで・・・。
なお、1978年式911SCの排ガス浄化システムはもともと酸化触媒とエアポンプの組み合わせ。それに対して今回使うのは三元触媒で、本来ならO2センサーの出力信号をフィードバック制御に使うのだが、これには独自の方式を試みる。
続いて吸気系。
6本のインテークランナーのインジェクタースリーブは案の定劣化していて、打ち抜くそばから崩壊。Oリングも完全に潰れている。スリーブの周囲にはシリコン系シーラントが塗りたくってあったが、エア吸いのトラブルでもあったのだろうか。
塗られていたシーラントを除去すると、インジェクタースリーブを固定するためのカシメ部が姿を現した。このままでは新しいスリーブを入れることができないため、グラインダーで削り取る。新しいスリーブはカシメ無しのままとなるのだが実害はないと思われる。スリーブは新しいOリングを装着し14mmのソケットレンチで押し込んだ。
埃とオイル汚れにまみれたエアボックスを綺麗にする。幸い割れなどは無い模様。インテークランナーとのラバージョイントは全て交換する予定。
ミクスチャーコントロールユニットとフューエルディストリビューター。ここも酷く汚れている。フューエルディストリビューターは、3本のM6固定ボルトがなぜか全てガタガタに緩んでいたり、口元のOリングが変な潰れ方をしていたりと、不思議な状態だった。
ミクスチャーコントロールユニットはフューエルポンプのON/OFF機能も受け持っている。このスクリューには絶縁用のベークライト製ワッシャーが入っているが、肝心のスクリュー自体が金具(写真左下)の穴内径に接触しては元も子もないため、熱収縮チューブを被せてスクリュー自体も絶縁しておいた。スクリューの絶縁不良一つでフューエルポンプが突然止まっては怖い。
内径60mmのホットエアホース。内側のアルミと外側の黒いアルミの間に紙が入っている構造、またドイツ・ベバスト製という点からも元のホースとほぼ同じ仕様と思われる。切り売り品を探しまくった結果、キャンピングカーの燃焼ヒーター用として売られているのを見つけた。ただしマフラーと至近距離の左側にはこれは使わず、アルミだけでできた別のホースを用意する予定。
ヒーターへのエア供給については、今回のオーバーホールを機に、エンジンルーム内左奥の空間を独占し邪魔に感じていた元の電動ファンシステムを廃し、ナロー時代と同じシンプルな方式へとバックデートすることにした。
左のエアダクト、社外品。チェーンハウジングとの固定点の位置が合わないためスペーサーを自作して溶接した。また現品に貼付されていたラベルには、従来よりも広範な年式の911に適合するよう2015年5月に形状を改良した、との説明がある。おそらく無接点化され大径化したCIS用のディスビに対応するために逃げ形状を大きくした点がそれだと思われるが、そのせいで中のエア流路はだいぶ狭い。
右のエアダクト、同じく社外品。こちらは固定点のスポット溶接が心許なかったので追加溶接で補強。パイプ部分はなぜかエアホースの内径60mmより僅かに大きめにできている。
オイルまみれだったミクスチャーコントロールユニットを綺麗にし、フューエルディストリビューターを組み付ける。フューエルディスビ自体も分解してみたのだかったが、色々調べていくと恐ろしいほどの精密な部品の集合体のようだったので、今回は見合わせた。
アイドル時の混合比を調整するスクリューに3mmの六角レンチを差し込んでみた。エンジンを車体に戻したら長さを調整するつもり。
EGRバルブからエアボックスに繋がるパイプを綺麗にしたり、アルミ製のエアバイパスパイプ先端の劣化したラバーホースを交換(手持ちの日産純正品をカットして流用)したり・・・
ファンAssyの組み付け、手が入りにくくやりづらいオルタネーターの配線接続や・・・
ディスビのピニオンギアの固定をオリジナル通りのかしめピンに戻す作業など、細々とした作業を経て・・・
エンジンAssyの全体像が見えてきた。スロットルボディの輝きはそこかしこから漏れ出したオイルの被膜に長年守られてきたおかげか。
フューエルラインとバキュームコントロール系統の配管へと移る。
元々付いていた古いフューエルラインを仮装着して経路を確認しながら新品を組み付けていく。フューエルライン全て新品へ交換、のつもりが、フューエルディストリビューターおよびウォームアップレギュレーターからタンクへの戻りラインが純正・OEM品ともに供給されていない模様。そこで色々と検討した末・・・
フューエルディストリビューターからの戻りラインにはこれを試してみることにした。潤工社のジュンロンAS1、内径6mm x 外径8mm、軟質ナイロン製。カタログではガソリンへの耐性ありとのことで、また別の同径の古いラインから外したフィッティングを試しに挿入してみると、フィット感はなかなかタイトで良さそう。
分解前の元のフューエルディストリビューターtoタンクライン。
そしてジュンロンAS1に組み替えたライン。保護のためにポリエステル製の編組チューブを被せた。比較的低圧のラインとはいえあくまで自己流なので、車両が無事に路上復帰したあとも状態を時々チェックする必要があると思っている。
ウォームアップレギュレーターからタンクへの戻りラインは、ジュンロンシリーズには適していそうなラインアップが見当たらないため、ゴム製のフューエルホースを使う予定。
コールドスタートインジェクターのマウントもプラスチック製で何となく心許なく感じたので交換。エンジンの前方部分に付く部品はエンジンを車体に戻してしまうと手が入らないので、心配な箇所は一通り手を入れておきたい。
・・・とここで、スロットルリンクのボールジョイントにだいぶガタがあることに気付いた。摩耗しているのはボールではなくジョイント側の模様。しかし、片端が右ねじ、もう一端が左ねじになっているこのロッドAssyはもう供給されていない模様。そこで、手持ちの径5mmのロッド(バイクのリアブレーキロッドだったと思う)をカットして両端に右ねじを切り、単体で純正品として供給されている右ねじのボールジョイントを両端に組み付けて代用とした。少し調整がやりづらくなるかも知れないが、アクセルペダルの遊びを極力減らしてダイレクト感を味わうことを優先した。
その前方から伸びてくるロッド先端のボールジョイントもガタガタだったので、同じように交換。
エアコン(クーラーと呼ぶべきか)も諦めたくない。作業性の良い今のうちに純正のコンプレッサーマウントを装着しておく。裏側の補強リブがエアホースと若干干渉したので削ったものの、元の位置にすんなり収まった。
これでエンジンの組み上げは一通り完了。