ブレーキのオーバーホール / Brake rebuilding
この車を引き取り自走してきた時から明らかに異常が感じられたブレーキ。リアキャリパーは左右とも固着気味で、ジャッキアップしてタイヤを手で回すことができないほど。フロントはフロントで片効き気味。何にせよ、古い車を入手したら必ずやるべきブレーキ系統のOHを、エンジンが降りて作業しやすい間に進める。
まずは右のリア。パッドの残量は既にゼロで、ベースプレートがローターとの接触で削られ始めていたという驚愕の状態。
ピストンは極限まで押し出され、ダストカバーはもはやその機能を果たしていないのが一目で分かる劣化状態。
状態の酷さは右と同様。これらのキャリパー、過去30数年でのオーバーホール歴はあるのだろうか。無いような気がする。
ヨレヨレのダストカバーを外したところ。目を覆いたくなるサビ。
それではとリアローター2枚を外してみれば、それはもう見事なまでの摩耗状態。ピストンが異常に押し出されていた一因がこれ。迷うことなく交換決定。
難航の末ピストンを抜き取った。ブリーダープラグの穴からエア圧を掛けたがピストンはピクリとも動かず。仕方がないのでM10 x P1.0のグリスニップルを取り付け、グリスガンでグリスを送り込み加圧してようやく抜くことができた。キャリパーの口元、ピストンシールより手前側は、ダストシールがダメになり水が入ったせいか、内径面がサビサビ。このサビがピストン固着の一因だったのかも知れない。試しに未洗浄のままピストンを再挿入しようとすると、口元で引っ掛かり中まで入っていかない。
未撮影だが、ブレーキホースも手で触った際のコシのなさや表面の状態から、新車当時から未交換ではないかと推察される。
サイドブレーキ系統も並行して分解していく。室内のレバーAssyのベース固定ボルトを取り外し、続いてレバーから左右ワイヤのイコライザーとその固定ピンを外す。固定ピンは周囲のグリスが固化していて抜くのに手間取った・・・ ということは、この部分もこれまでのOH歴無しか。
ワイヤに塗られたグリスが比較的新しく、一度交換された形跡のあるサイドブレーキワイヤ左右。状態は悪くなく再使用も可能かと思いながらワイヤを引き出してみたら、撚り線にほつれ・切れが発生していた。交換決定。
リアブレーキキャリパーを組み上げる。まずはピストンシールより手前の内径部で激しく発生していたサビを地道に落として・・・
ピストンとシール、ダストカバーにブレーキグリスを塗り込んで組み付け、スムーズにストロークすることを確認。ピストンには組み付け角度があるので注意。新品のパッドを組み込み、リアキャリパーAssyは完成。
パーキングブレーキ。ここはシューのみ新品に入れ替えた。自動調整機能なし。レバーを引いた時の遊びの調整などはディスクを取り付けた後に行う。
リアブレーキディスク。スリット入りを選んでみたが、効果やいかに。
マスターシリンダーとブースターも、過去の整備履歴が分からないためオーバーホールする。ブロアシステムの取り外しと並行して作業を進める。
過去にマスターシリンダーがフルード漏れを起こした跡を発見。そのフルードでブースターの口元が錆びてしまっている。付いていたマスターシリンダーは、見る限り、漏れが発生したあとで交換されたもの。ブースターの口元の面とマスターシリンダーの間にOリングが入り気密性を持たせる構造なので、ここが錆びていてはまずい。再組立ての前には錆を落とし、グリスを薄く塗布する。
マスターシリンダーはオーバーホールキットがないようなので、丸ごと交換。プッシュロッドが挿入される部分の深さが新旧で同じであることを確認して、ブースターに組み付ける。なお、リザーバータンクとの接続も一緒にやってしまったが、これは車上で行ったほうが良い。ヒーターのダクトやコントロールケーブルの脱着をする際に邪魔になるため。
リアよりマシかと思っていたフロントキャリパーの状態。サビで固着したピストンはエア圧を最大限にかけても微動だにしない。
仕方ないのでグリスガンを使う。右フロントはそれでも難航した。ピストンを全て抜き取り、キャリパー内部を洗浄して内壁を観察すると、シールより外側には虫食い状のサビ。
パッドの裏面には鳴き止めグリースを塗布。この要否については議論があるようだが、塗っておく。
ここで元々付いていたブレーキホースを見てみる。全体にひび割れが発生し、右フロントのホースはなんとカシメ部分が腐食し液漏れした形跡が。いかにも古そうなこれらのホース、一体どのくらい交換されていなかったのだろうか。